さて、ザルカ支援センターで行われている子ども向け心理社会的ケアワークショップでは、9月6日と20日、3か月間のプログラムの集大成としての演劇発表会がザルカ県内の劇場にて開かれました。全参加者60名が4グループに別れ、1日2グループずつ、それぞれの演劇項目を発表しました。

心理社会的ケアワークショップは、過去の辛い経験を見つめ直し、語りを紡ぎ出して自分なりの物語を完成させ他者に受け止めてもらうことで、内戦や日々の生活難で負った心の傷を癒すことを目的としています。演劇活動では、これまで行ってきた描画やクレイモデルより高次元の、時間軸を持つ表現形式をとるため、より一層緊張感のある情報量の多い表現を通して過去と向き合う密度を高めることが期待されます。以下、子どもたちが演劇を通して伝えた苦悩について、場面ごとに紹介したいと思います。

このグループは、学校を辞めて働くことを父親に強いられる子どもたちと、夫からの暴力を恐れるあまり周囲に助けを求めることができない母親の葛藤を表現しました。第三者として役を演じ、客観的に過去の経験を見つめなおすことで、心の整理が加速されていきます。

他のグループにて演じた、この女の子は、学校のみんながバスで通学するなか、自分だけ徒歩で学校に通わなければならないなどの苦悩を抱えながらも、家庭の経済状況を考えると、両親になかなか本当の気持ちを伝えられないもどかしさを訴えています。観客のみなさんの反応が直接彼女に伝わり、セリフにもより一層気持ちがこもります。

両日ともに、参加者のご家族や地域の方など、たくさんの方にご来場いただきました。中には劇の内容に共感し涙する方もいらっしゃいました。

発表を終え、ワークショップで学んだことを堂々と発表する出演者
自分の紡いだ物語が観に来た方々に受け入れられただけでなく、その人たちの心を良い方向に動かしたという実感は、子ども達が自分を肯定していくきっかけとなり、被害にあってマイナスに振れた彼らの心をプラスへ動く大きな力にきっとなるのではないかと思います。
*NICCODのシリア内戦の被災者に対する人道支援事業 (ヨルダン人貧困層に対する支援を含みます)
http://www.kyoto-nicco.org/project/support/syria001.html
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用品 知美
*NICCODはアラビア語圏でのNICCOの呼称です。